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    WWDCに見るアップルのビジネススタイル--堅調な成長を続けるための戦略とは

    水野政司(サン電子) 2009/06/10 15:04

    堅調な成長を続けるアップルの戦略

     世界中のアップル関連製品の開発者を集めた「World Wide Developers Conference(WWDC)」が米国サンフランシスコで8日(現地時間)から開催されている。筆者も5日間をカンファレンスで過ごす予定だ。

     カンファレンス内容はすべてNDA(秘密保持契約)下の非公開イベントだが、最初のセッションである基調講演は公開される。基調講演会場で生の発表を聞き、デベロッパーの立場から感じたことを記したい。

     今回の基調講演はiPhoneの新型が発表されるのではないかという噂や期待が飛び交い、注目の中での開催となった。チケットは4月末には売り切れたということからも期待の高さが伺える。

     講演を聞き終わっての感想を一言で言い表せば「堅調な成長を続けるアップル戦略」だ。アップルはモノ作りの会社である。洗練されたデザインとソフトウェアを徹底的にこだわり、世界をリードするビジネススタイルを確立しつつある。

     今回の発表では新型MacBook Proの即日販売開始、今年発売予定の新OSの機能紹介、そしてiPhone 3G Sの発売などがアナウンスされた。これらの動きから垣間見えるアップルの戦略を読み解いてみたい。

    • 新しいMacBook Proが発表された。会場はヒートアップしていく

    • Snow Leopardの価格が発表され会場は拍手で包まれた

    AppStore“販売価格と開発費のミスマッチ”からの脱出

    • iPhoneアプリが5万タイトルを超えたことが示された

     アップルは、iPhoneでアプリの流通市場をフラット化した。これはiTunesのAppStoreを通じて国や携帯電話会社の枠を超えたアプリ流通市場を創出した。これに全世界のデベロッパーが参画し、大きな賑わいを見せている。約1年で5万本のアプリが棚に並んだのだ。iPhone3G SとiPhone OS 3.0によって従来の1ダウンロード毎の課金体系からアイテム課金や月額課金が加わることで売り上げ規模が大きくなる可能性を秘めている。

     これまでAppStoreでアプリを販売しているデベロッパー側から見た大きな問題点は、売り上げ規模が小さかった点だ。アプリの価格帯が無料、100円、600円前後に集約されたことでダウンロード本数を稼がないと売り上げを確保できなかったのだ。個人デベロッパーとしての開発販売であれば、ランキングで10位以内を獲得できれば年収以上の売り上げを得られるだろう。

     しかし、企業がビジネスとして参入するには売り上げ額の桁が1桁、2桁足りなかったのも事実だ。ユーザーが満足するクオリティを出すためには開発コストが上がる。しかし価格が100円では開発費の回収すらおぼつかないことになる。価格が600円程度のものはユーザーを満足させるレベルが高い。つまり販売価格と開発費のミスマッチが起こっていたのである。

    アイテム課金や月額課金が加わったiPhone OS 3.0

    • iPhone OS 3.0が6月17日にリリースされることが発表された瞬間

     iPhone OS 3.0の新機能として、アイテム課金や月額課金が加わった。これにより、利益の出し方が変わってくる。以前はダウンロード本数だけが売り上げに直結していた。しかし課金方法が変わることで継続的な利用に関しても利益が得られるというわけだ。これはビジネス的な側面では画期的なことだ。

     同じ1本のダウンロードでも月額課金であれば継続月数だけの売り上げが期待できる。アイテム課金であればアプリ内でのやりとりによって売り上げ規模を膨らます事ができる。ダウンロード数が同じであれば売り上げ規模が数倍になるということだ。

     つまり、デベロッパーの売り上げ額の桁が上がる可能性があるのだ。もちろん、それに連動してアップルの収益も増加する。

    • 新型iPhoneの名称は「iPhone 3G S」。「S」はスピードを示すという

     そして同時にアップルの柱であるMacBookシリーズの刷新と新OSの価格が発表された。MacBookシリーズは値下げ、次期Mac OSに至っては、現行OSからのバージョンアップは29ドルという低価格だ。一連のアップルの動きを見ていると、その底流には新しいビジネススタイルが潜んでいるように思われる。

    アップルのビジネススタイルとは

    • iPhone OSを搭載したハードは4000万台にのぼる

     第1ステップは、魅力的なモノで顧客を囲い込むことだ。iPhoneにせよMacにせよ、モノという媒体を通じて自社のロイヤルカスタマーにリーチし、つねに使い続けるユーザーになってもらう。通常のメーカーであれば、ここで止まってしまうことが多い。

     第2ステップでは、顧客が利用するサービスで利益を得るのだ。AppStoreではアプリの流通手数料として30%がアップルの取り分となる。Macの場合はMobileMeやiPhotoのフォトアルバム製本サービスなどがある。MobileMeは年間9800円だ。次期Mac OSの価格設定はモノの価格というよりはサービス料の色合いが濃いように思われる。

     そして、ハードウェアの価格をある程度高価にし、サービス利用料を支払える顧客層にリーチしていることも巧妙だ。その上でアップル製品とネット上のさまざまなサービスを連携させ、継続的に売り上げを上げていく仕組みを確立しつつあるように受け取れる。

     モノとネットサービスを連携させて成長を続けるアップルの動きは、電子産業の行く末を見据えた成長戦略ではないだろうか。

    • 基調講演が終了して会場を後にする人の群れ

     つまりロイヤルカスタマーを囲い込み自社サービスを継続的に利用してもらうことで収益を得るのだ。iPhone OS 3.0で課金方法を拡張したのも、この考え方に沿った流れだと考えられる。アップルはiPhoneアプリ固有のロイヤルカスタマーを育む仕組みを提供し、デベロッパーの売り上げ規模が大きくなる可能性を用意している。

     アップルはハードウェアというモノを媒体としてロイヤルカスタマーを生み出した。iPhoneデベロッパーは、「アプリ」というソフトウェアを媒体としてロイヤルカスタマーを生み出さねばならない。この2つは相似形と言える。つまりアップルは自社だけでなく他社をも巻き込んだ大きなビジネスの流れを作り出そうとしているように見えるのである。

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