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デジタル製品

アップル「iTV」発表への7つの疑問

2006/09/13 23:11
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 Apple Computerによる新製品を受け、9月12日午前に東京都内で開かれたアップルコンピュータのプレスイベントに参加してきた(会場で流されたSteve Jobs氏の基調講演は、Appleのウェブキャストのページから観られる映像と同じものだったが、さすがに劇場並みの巨大なスクリーンとプロ用音響システムで見聞きするグラミー賞歌手John Legendのパフォーマンスは背筋がちょっとゾクゾクするようなすごさが感じらられた・・・それはさておき)。

 ニュースでお伝えしているように、今回はiPod製品のモデルチェンジやアップデートを中心に、iTunesのバージョンアップ(バージョン7が登場)、そして新たに「iTunes Store」となったオンラインストアでの長編映画のダウンロード販売開始などが発表された(メディアおよびIT業界にとっては、映画販売のスタートのほうが重要かも知れないが、当分はこのサービスを利用できない日本のユーザーにとって、関心度はこの順番になるのではないか)。

 Appleについては毎度のことだが、事前にたくさんの情報(噂)が飛びかっていたせいか、新型iPod nanoの「カラーバリエーション復活」もすでに半分織り込み済みで、また登場の期待が盛り上がっていた「フルLCD iPod」が出なかったことに若干肩すかしを食らったような観もあった。もっとも、予期せぬものの登場をどうしても期待してしまい、既存製品の延長線上にあるモノやインクリメンタルな改善では物足りないと感じてしまうのは、ユーザーとしてAppleの動きを長い間見てきた者の習性かもしれない。それでも、今回の発表ではそうしたいインクリメンタルな改善のなかに、ユーザーの使い勝手向上を意識した重要なものが含まれているとの印象を受けた。

 とくに、iTunes 7では1台のiPodを介して2台のマシン(たとえば、家のMacと職場のPC)間でライブラリを共有できるようになったが、これはいままでDRMの仕組みから(できなくても)仕方のないこととあきらめ、見過ごしていた部分だった。同じように、CDからiTunesに取り込んだ楽曲については基本的に手動で探してこなければアルバムのカバージャケットのイメージを付すことができなかった(方法はあると知っていても、音楽の量をCDの枚数ではなく、Gバイト単位で把握するようになったいまでは、こうした作業もやる気が起きない)が、Appleが無料でカバーアートを提供することで、ユーザーの抱えるこの問題の解決に乗り出したことも高く評価できる点だ。

 もちろん、新しいiPod自体も、これまでの価格と同程度もしくはさらに低価格でより多くの価値を提供するものとなっており、その点では購入して損のないものだと考えられる。とくに、上位機種nanoの値下げでどういう位置づけになるのか微妙に思えたShuffleのラインは、今回のモデルチェンジにより、クリップで留められる「世界最小のMP3プレーヤー」に変身したことで新しい価値を提供し、一種のファッションアイテムのような位置づけで使われるようになるのではないか。

 さて。前振りがとても長くなったが、ここから「iTV」と映画ダウンロードの話をする。

 Appleがリビングルーム進出を視野に入れ始めていたことは、Mac miniが初めて登場した頃から察知できたことだ。その後、iMacを手始めに「FrontRow + Apple Remote」が搭載されると、そのことはいっそうはっきりとしてきた。さらに噂レベルでは、(ステレオと接続できる)AirMac Expressのビデオ版が開発されているとの話も出ていた。だから、iTVの登場自体には特に疑問もない。

 ただし、今回の映画配信とiTVの(先行)発表についてはいくつかの疑問がわく。以下、順不同でそれらの点に触れてみたい。

1.発表のタイミング--なぜ「いま」なのか?
 Appleは今回、2007年第1四半期に発売予定のiTVを「preview」として明らかにした。同社のハードウェア製品が発表と同時に発売にならないというのは、少なくともここ数年はなかったことだ(いわずもがなだが、サードパーティ開発者への周知が必要な、OSやプロセッサの切り替えとは事情が異なる)。

 この疑問については、1つの仮説が浮かぶ。それは、「Appleは今回、iTVの発表を迫られた」というもの。こう考える理由は簡単で、映画のダウンロード販売開始と同時にテレビとの接続の方法を提示できなければ、今後の方向性を示すビジョンを「完全な(Complete)」形で伝えることができないからだ。それでは、映画販売の発表のインパクトが薄れるだけでなく、外部に対して多くの疑問を投げかけることになる。

 一方、「映画ダウンロード販売の発表が、なぜこのタイミングだったのか」については正直よく分からない。「いずれはiTunesで・・・」という話はかなり前からあったように記憶している。だから、今回正式にサービスが始まったことにも特に驚きはない。ちなみに、9月6日には「アップルとアマゾンの対決は、ディスニー対ほかの映画会社の戦い(In Apple v. Amazon, it's Disney versus the rest)」という記事が出ていたが、実際にふたを開けてみると、そのタイトル通りの展開となった。DisneyとAppleはいまや兄弟会社といってもいい間柄なので、両社が話をまとまるまでにそれほど時間が必要だったとも思われない。

 そう推論していくと、Appleとしては他の映画会社もなるべく多く参加させようと努力を続けていたが、Amazonと他の大手映画会社の動きを知って、今回の発表を「見切り発車」的に行った--その場合、なるべく多くの配信経路を持ちたいはずのDisneyをAmazonの試みに参加させなかった理由も、競争上の観点から多少は納得がいく--、もしくはAppleが「基本的に固定価格」という価格設定に譲歩したくない他の映画会社らとの交渉に業を煮やし、仲間のDisneyとだけ先行する--両社にはテレビ番組の配信で先行し、結果的に他のテレビ局を追従させたという実績があり、それに裏打ちされた勝算があると仮定できる--との話を聞きつけたAmazon+他の映画会社が後れを取るまいとUnboxを開始したか・・・。

 このあたりの舞台裏の動きについては、いくら想像しても興味が尽きることはないが、いずれ真相が明らかになる日が来るかも知れない。そして、いうまでもなく、より重要なのはこれからの両社、そしてWal-martを初めとする他の(潜在)競合サービスがどんな結果を市場で出していくかという点であり、それ次第では一気に各コンテンツホルダーがiTunesにコンテンツ提供・・・という展開がまた繰り返される可能性も考えられる。

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